「山のポーズ(タダーサナ)」は、一見すると「ただ立っているだけ」に見えるヨガの基本ポーズです。
ところが実際にやってみると、「足裏のどこに体重をかける?」「膝は伸ばし切っていい?」「骨盤はどの位置?」など、意外と迷うポイントがあります。
この記事では、ヨガ初心者の方にもわかりやすく、山のポーズの基本的な立ち方と身体の使い方を解説します。反り腰になりやすい場合や、まっすぐ立っている感覚がつかみにくい場合のポイントも紹介します。
日本語名 :山のポーズ
サンスクリット語名:タダーサナ、ターダーサナ (Tadasana)、
サマスティティ(Samasthiti)
英語名 :Mountain Pose
「山のポーズ」とは?「ただ立つ」のとは何が違う?
「山のポーズ」は、まっすぐに立つシンプルなポーズです。一見するとただ立っているように見えますが、足裏から頭までの位置を確認しながら姿勢を整えていく、ヨガの基本となる立位ポーズです。
普段立っているときは、片方の足に体重をかけたり、膝を伸ばし切ったり、腰を反らせたりしていても、あまり身体の使い方を意識することはありません。しかし、そのような楽な姿勢には、その人の普段の身体の使い方やクセが表れます。
一方、山のポーズでは「まっすぐ立とう」と頑張るのではなく、今、自分がどのように立っているかを観察することから始めます。
たとえば、次のようなポイントを確認してみましょう。
こうして足元から頭まで順番に意識を向けると、自分では気づかなかった立ち方のクセが見つかることがあります。
「きれいに立つこと」よりも、「自分がどう立っているかに気づくこと」
これが、普段何気なく立っているときと、ヨガで山のポーズを行うときの大きな違いです。

山のポーズで意識したい身体のポイント
山のポーズでは、足裏から頭まで、身体を下から順番に確認していくことが大切です。無理に背筋を伸ばしたり、胸を張ったりするのではなく、余計な力を入れずに安定して立てる位置を探してみましょう。
1. 足裏|床をしっかり感じる
まずは、足裏が床に触れている感覚に意識を向けます。かかとだけ、あるいはつま先側だけに体重が偏っていないかを確認してみましょう。
かかと、親指の付け根、小指の付け根を目安に、足裏全体で床を感じます。足指を強く握り込まず、自然に広げて立つこともポイントです。

2. 膝|伸ばし切らず、自然に立つ
まっすぐ立とうとして、膝を後ろに押し込んでいませんか?膝を無理に伸ばし切ると、関節に負担がかかる場合があります。膝は自然に伸ばし、太ももにも余計な力が入りすぎないようにしましょう。
膝を少し緩めた方が立ちやすい場合は、無理に伸ばさなくても大丈夫です。
3. 骨盤|前後に傾けすぎない
骨盤の位置は、立ち姿勢を整えるうえで意識したいポイントです。腰を反らせてお腹を前に突き出したり、反対に背中を丸めて骨盤を後ろに傾けたりすると、身体の一部に負担が集中することがあります。
お腹に軽く意識を向けながら、骨盤を前や後ろに無理に傾けず、自然に立てる位置を探してみましょう。正しい位置を無理に作ろうとする必要はありません。
4. 背骨と肋骨|胸を張りすぎない
背筋を伸ばそうとすると、胸を大きく張り、腰まで反らせてしまうことがあります。背骨を無理に反らしたり、背中を丸めたりするのではなく、頭が身体の上に自然に乗るような感覚を意識してみましょう。
肋骨が前に突き出ていないかも確認します。背中や腰に力が入りすぎていない状態を探すことがポイントです。
5. 肩と首|余計な力を抜く
姿勢を整えようと頑張るあまり、肩が上がったり、首に力が入ったりすることがあります。一度、息を吸いながら肩を軽く持ち上げ、吐きながらストンと下ろしてみましょう。その位置から、肩の力を抜いて首を自然に保ちます。
あごを前に突き出さず、視線は正面の楽な位置へ向けましょう。
6. 頭と呼吸|全身のバランスを感じる
最後に、頭が左右どちらかに傾いていないかを確認します。頭頂が上へ伸びていくようなイメージを持ちながら、背骨を自然に保ちましょう。
そのまま、呼吸を止めずに数回、ゆっくりと呼吸します。身体のどこかに余計な力が入っていないか、左右の足に体重が偏っていないかも感じてみてください。
山のポーズは、見た目を完璧に整えるためのものではありません。足裏から頭までの感覚に意識を向け、自分にとって無理のない安定した立ち方を見つけていきましょう。

自分でできる!山のポーズのステップガイド
山のポーズは以下の手順で行ってみましょう。


- 骨盤の幅に足を軽く開き、重心を均等にして床の上にまっすぐ立ちます。両膝を軽く曲げて、肩の力を抜き、リラックスした姿勢を作ります。
- 足の指を持ち上げて開き、床を捉えるように置き直しましょう。足の裏をしっかりと感じることで、地面との一体感を得ることができます。
- 息を吸いながら腕を頭上に伸ばし、指先を天井に向けて引き上げます(ウールドヴァ ハスターサナ)。この時、背筋を真っ直ぐに伸ばし、肩を下げることを意識します。心と体が調和し、ポーズの効果を最大限に引き出します。
- 息を吐きながら、腕を体側の遠くを通るようにおろしましょう。
- もう一度大きく胸で息を吸います。吐きながら肩の力を抜いて、耳から遠ざけるように床の方へ下げましょう。
- 小さく息を吸いながら肩が上がらないようお腹だけ引き上げ、頭のてっぺんも天井から吊られているように引き上げます。背筋を真っ直ぐ伸ばしましょう
- 胸を開いてアゴを引き、目を閉じて、深呼吸を繰り返します。心の中で、自分が大地に根を張り、高く伸びる木のようなイメージを思い描いてみてください。
このプロセスが、山のポーズの魅力を引き出す方法です。自分自身のペースで行えるため、どこでも実践できます。
山のポーズの立ち方や身体の使い方を動画で確認したい方は、こちらも参考にしてみてください。↓
山のポーズがうまくできないときは?
山のポーズがうまくできない場合は、以下の軽減方法を試してみましょう。
まず、反り腰になってしまう場合は、軽く膝を曲げてみることが効果的です。これにより、腰への負担を軽減し、より自然なバランスを保ちます。また、骨盤を少し後ろに傾けることで、腰の位置を調整できます。
足裏の体重のかけ方がわからない場合は、両足の指全体を地面にしっかり根付けることを意識してください。かかとも均等に使い、外側と内側の足裏の感覚を確認しながら体重を分配します。
膝が突っ張ってしまう場合は、少し膝を緩めることが大切です。膝を完全に伸ばすのではなく、わずかに曲げることで、筋肉がリラックスし、より安定したポーズをキープできます。
最後に、肩や首に力が入ってしまう原因として、緊張や不安が考えられます。これを解消するためには、意識的に肩をリラックスさせ、首を長く保つことが重要です。深い呼吸を行いながら、身体が解放される感覚を体験してみてください。

呼吸とともに身体の感覚を確かめよう
山のポーズでは、自然に立つ感覚を体験することが重要です。このポーズを取る際には、息を止めずに、ゆっくりとした呼吸を意識しましょう。呼吸は心と身体をつなぐ重要な要素であり、ポーズの安定感を高めます。
足裏の感覚に意識を向けることも大切です。足の裏全体が地面にしっかりと接触していることを感じ取り、体重を均等に分配します。これにより、身体の重心が安定し、内なるバランスが保たれます。
また、肩に力が入っている場合は、自分の身体に耳を傾けることが効果的です。緊張を感じる部分に意識を向け、呼吸を通じてリラックスさせることができます。肩や首は特に緊張しやすい部位のため、これらの感覚を観察しながら、ゆったりとした呼吸を続けましょう。
身体の状態を観察することで、自分自身の変化に気づくことができ、より深いリラクゼーションに繋がります。自然な立ち姿勢を持続させることで、心身ともに穏やかさを感じるでしょう。
山のポーズを取り入れた30分のヨガフロー
山のポーズを行う際には、深い呼吸が重要です。鼻から吸い込み、口からゆっくりと吐き出すことで、リラックスした状態になり、集中力を高めることができます。そのことを意識して次のフローを行ってみましょう。
- 呼吸と立ち姿勢の確認(3分)
足を肩幅に開いて立ち、両手を体の横に自然に下ろします。背筋を伸ばすことを意識します。深い呼吸を繰り返しながら、身体全体のアライメントに気を配ります。 - 肩・背中をほぐす準備運動(4分)
次に、肩や背中をほぐします。肩を回したり、上に持ち上げたりして、緊張を和らげましょう。これにより、山のポーズへの移行がスムーズになります。
- 山のポーズ 〜 手を上に伸ばすポーズ(3分)
「山のポーズ」を取ります。呼吸を繰り返しながら胸の前で合掌します。息を吸いながら両手を上に伸ばし、指先を天井に向けて引き上げましょう。ここで重要なのは、自分の身体の感覚に注意を向けることです。
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- 前屈のポーズ(4分)
次に、「前屈のポーズ(ウッタナーサナ)」へ移行します。吐く息で両手を横から床へ下ろし、股関節から上半身を前へ倒します。手は必ずしも床につかなくても大丈夫です。膝を軽く曲げて手をすねやヨガブロックに置いても構いません。無理をせず、楽に呼吸ができる選択をしましょう。

- 山のポーズ(1分)
前屈のポーズから、ゆっくりと立位に戻ります。膝を軽く緩め、無理のない範囲で上半身を起こしましょう。足裏全体で床を感じながら、両足に体重を均等にかけるように立ちます。
山のポーズに戻ったら、肩の力を抜き、呼吸を整えましょう。最初に立ったときと比べて、足裏や身体の感覚に違いがあるか、無理のない範囲で確かめてみてください。
- キャットカウ〜ダウンドッグ(8分)
山のポーズから山のポーズから、無理のないようにゆっくりと床に手と膝をつき、四つんばいの姿勢になります。ここで、「キャットカウ」や「ダウンドッグ」を組み合わせることで、背中を伸ばし、体全体をほぐすことができます。これらのポーズは、筋肉の緊張を和らげ、血行を良くする効果があります。また、精神的なクリアさも促進されます。
また、ダウンドッグのポーズで踵がつかない場合は、膝を軽く曲げて背中をまっすぐにすることを優先させましょう。



- 山のポーズで身体の感覚を再確認(2分)
もう一度「山のポーズ」に戻り、身体の疲れを感じながら、身体の感覚を再確認します。最初の立ち姿勢の安定感を感じます。
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- リカバリーポーズ(5分)
最後に、「シャバーサナ(屍のポーズ)」で休息し、呼吸を整えましょう。フロー全体を通じて、身体と心のつながりを再確認することができ、非常に充実した時間になるでしょう。

山のポーズのバリエーション
基本の山のポーズに慣れてきたら、腕の位置や足元を変えて、身体の感覚を確かめてみましょう。ここでは、山のポーズをもとにした3つのアレンジを紹介します。

両手を上に伸ばすアレンジ
(万歳のポーズ)
山のポーズで安定して立ち、息を吸いながら両腕をゆっくりと頭上に伸ばします。手のひらは向かい合わせにするか、無理のない範囲で合わせましょう。
肩が上がったり耳に近づきすぎないように気をつけ、腰を反らせずに自然な姿勢を保ちます。肩や背中に痛みがある場合は、腕を上げる高さを調整してください。
背中側で手を組むアレンジ
山のポーズで立ち、両手を背中側に回してお尻の後ろで組みます。肩を無理に後ろへ引かず、胸の前側が心地よく開く位置を探してみましょう。肩甲骨を寄せるよう意識します。
手が届かない場合は、タオルなどを両手で持っても構いません。腰を反らせたり、あごを突き出したりしないように注意します。肩に痛みや違和感がある場合は、無理に行わないでください。
かかとを上げるアレンジ
(つま先立ち)
山のポーズで両足を安定させたら、壁や椅子の背もたれなどに手を添え、ゆっくりとかかとを持ち上げます。足指の付け根で床を押すようにして、つま先立ちの姿勢を保ちましょう。
ふらつかない範囲で数秒間キープし、ゆっくりとかかとを下ろします。バランスに不安がある場合は、必ず支えを使いましょう。無理に高くかかとを上げる必要はありません。
どのアレンジも、形を完璧にすることより、呼吸を止めずに安定して行うことが大切です。自分の身体に合った方法を選び、心地よく動ける範囲で試してみてください。
体験記:立つだけから「山のポーズ」に変わった日
初めてヨガクラスに参加した日、インストラクターを真似るだけで精一杯だった私は、この立ち姿勢がヨガの1つのポーズだとは認識できていませんでした。後から、そういえば何度も「マウンテンポーズ」と言っていたなと思い出し、立つだけのポーズではなく、名前のあるヨガポーズであることを知りました。
その後ある日、ただ姿勢よく立つだけだったポーズが、「山のポーズ」へと変わった瞬間はよく覚えています。「お尻を軽く引き締めて骨盤をまっすぐに」や「下腹部をグッと引き入れて」という、毎回聞いていたはずのインストラクターの誘導が、その日はすーっと耳から身体に入ってきました。
いつもとは違った感触で、骨盤が立つことやお腹を中へ引き入れる感じを理解できたのです。それと連動して、床に接地する足裏の感触も変わり、上半身が横から見てまっすぐ一直線になるということも身体で感じました。
初めての不思議な体験でしたが、身体の小さな部位を微調整するだけで全身のポジションに影響を与えることや、身体の動きがそれぞれ連動しあうことを身をもって理解した体験となりました。
このポーズに関するよくある質問
Q1: 山のポーズでは足を揃えますか? 少し開いてもよいですか?
A1: クラスで、基本は足を揃える(または親指を触れ合わせる)と指導しますが、少し開いても大丈夫です。自身の体に合わせて、ポーズが安定する幅に調整してみてください。
Q2: 膝は完全に伸ばした方がよいですか?
A2: 山のポーズでは、膝は完全に伸ばし切らなくてよいです。膝を無理に押し込まず、自然に伸ばして立ちます。膝が突っ張ると感じたら、少し緩めてみましょう。
Q3: 目を閉じて行ってもよいですか?
A3: はい、目を閉じて大丈夫です。ただし、無理をしないでください。目を閉じるとバランスが取れずふらついたり、不安を感じたりする場合は、薄目を開けたり正面を一点見つめたりしましょう。また、周囲にぶつかるものがないか事前に確認しておくことも重要です。
Q4: どのくらいの時間、ポーズを続ければよいですか?
A4: 基本は5呼吸〜10呼吸を目安にすると良いでしょう。じっくりとポーズに向き合ってスタミナや集中力を高めたいときは、それよりも長めにしてみてください。
日常に山のポーズを取り入れよう
山のポーズは、ヨガの時間だけでなく、日常生活の中でも立ち方を見直すきっかけになります。足裏が床に触れる感覚や、肩や首に余計な力が入っていないかなど、普段は意識しにくい身体の状態を確認してみましょう。
毎日の生活の中で、次のようなタイミングに取り入れるのがおすすめです。
立ち方を確認するときは、背筋を無理に伸ばしたり、胸を張ったりする必要はありません。両足で安定して立ち、膝を突っ張らず、肩の力を抜いて自然に呼吸できているかを確かめてみましょう。
慣れてきたら、家族や友人と一緒に、それぞれの立ち姿勢を確認してみるのもよいでしょう。
山のポーズで大切なのは、いつも完璧な姿勢を保つことではなく、自分がどのように立っているかに気づくことです。日常の中でときどき足裏や身体の感覚に意識を向け、自分にとって無理のない立ち方を探してみてください。



